『苦役列車』読了。一種名状しがたい感情を覚えるなど。しかし、『私小説』って?(創作の話)(日記)

日記
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僕は毎年、親の確定申告の手伝いもしてるんですが、懇意にしてもらってる税理士さんに提出するための一環として、医療費の『細かな』計上があります。要は「医者」と「薬局」を別けた上で、年間の総合計費用を出さねばならんのですが、『ノートにペンで表と金額を書いて、計算は電卓で』というアナログな母を尻目に、Excelでさっくりやって見せたら「もう終わったの!?」と驚かれました(挨拶)。

と、いうわけで、フジカワです。明日はその母の83歳の誕生日なんですが、「今年は何をくれるん?」とあからさまに催促されたので、(まったく想定外の出費という意味で)「アウチ!」と思いつつ、「携帯ラジオが欲しい」とのリクエストに応じ、仕方なくAmazonでポチらざるを得なかったりした火曜日、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて。昨日、西村賢太氏の『苦役列車』をポチった話を書かせて頂きました。んで、今朝の通勤時間等を使って読み始めたんですよ。幸いなことと言っていいのか、そんなにボリュームのある本でもなかったので、1日で読み終わりました。いやまあ、全部通読するには、帰宅後の時間も多少使わざるを得ませんでしたが。

いやー、『今の(時代の)私小説とは?』というのを知りたくて買ったわけですが、ぶっちゃけ、ちょっと引きました。なんせ主人公(=作者)が、もう劣等感の塊で、あらゆる所で怨嗟をまき散らすんですよ。言い方は大変悪いですけど、下品、あるいは下劣なまでに。

そりゃまあ、氏の生い立ちからして「少年時代に父親が(よりにもよって)性犯罪のカドで逮捕され、家族が一気に周囲から白眼視される」という、ヘビーすぎるスタートです。『性犯罪者の息子』という十字架を、幼い頃から背負わされてる。境遇や心中を想像しろと言われても、容易ではありません。

おまけに、こりゃまあ人それぞれですし、僕の今の職場にもいますから、到底悪し様には言えないんですが、最終学歴は中卒。

表題作の『苦役列車』では、主人公は19歳。「ただれきった」と言っていいだろう日々の生活、劣等感に由来する、周囲へのねたみ、ひがみ、その他あらゆる負の感情、および己の汚い面が、まさしく叩きつけられるように書かれています。

『キャラ造形』として俯瞰してみても、全然共感できない。『無頼派』と称されているようですが、これじゃ『無礼派』だよ、とさえ思いました。

もうね、ちょっと僕も「それっぽく」書けるなら、「奈落の底に渦巻くヘドロから聞こえる、死に至る呪詛」ですよ。こーれーはー人を選ぶ。間違いなく。

ただ、そんな嫌悪感しか覚えないような人物造形、描写、台詞回しetc.であっても、僕はするすると読めました。その後、併録されている『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』を読んで、まあ不遜な話ではあるんですが、(すごく深いところで)結構(僕と)通じる物があるかも? と思いました。

実際と申しますか、昨日の段階で15ページほど書いた、僕の原稿。その中に、全くの無意識のうちに、一部において、氏と似たようなことを書いてました。そりゃ既視感を覚えますって。触発されて、今日の段階で、ほとんど時間がない中、原稿は19ページに増えました。

しかし、まさか僕も「いつか芥川賞を!」など吹聴するつもりは毛先ほどもないですが、ここまで怨嗟に満ち満ちていないと、今の時代に『私小説』って評価されないんでしょうか? だとしたら、今まさに僕が書かんとしているものは児戯にも等しいわけですが、その程度で折れる(創作的)根性はしていない。

すんッごく間違った言い方ですけど、僕には『精神を病んで20年近いというアドバンテージ』がある。太宰の『人間失格』は、主人公が精神病患者として隔離されるところで終わる上、作者の太宰自身も、38歳で自殺してます。

べーろい、こちとら29歳の時にうつになって、今年で48歳だぞ? That’s薬漬けだぞ? 薬がないと一睡もできない、おう、まどろみさえ許されない辛さが分かるか?

その薬が、何かの手違いで切れた時、文字通りに胸を掻きむしり、脂汗を流しながら床をのたうち回った経験はあるか? その他、挙げていきゃあキリがねえ。病人なめんな?

一つ言えるのは、西村氏、他の著作も色々あるんですけど、「当分読まなくていいかな?」ということです。なんせ毒っ気が強い。明日は、口直し(になるかどうかは知りませんけど)太宰の『女生徒』でも読みますよ。

ああ、すンげえ疲れた。けど、確かな学びにはなった。トントンってことで。

んじゃまた。

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